(T08) 現代脳科学と仏教心理学

浅野 孝雄(あさの たかお)

埼玉医科大学名誉教授

◆レベル 初級
◆水曜 15:00〜16:30
◆初講 2022年4月13日(水)全25回
◆東京本校 402号室〈教室のみ〉
◆受講料 ¥40,000

過去において、十二縁起の「有→生→死→無明→行→識」という支の連関は、もっぱら神話的・ドグマ的に解釈され、そのことが科学思想の発展に伴って仏教が衰退することの主な原因となってきた。しかし、現代脳科学の意識理論に依拠するならば、それは次のような心的プロセスとして理解することができる。すなわち、「有→生」の2支は、人間が意識の流れにおける刹那滅(「生→死」)を介して、動物的存在から精神的存在へと生まれ変わることを意味する。それに引き続く縁起の回転によって継続的な識が生まれ、それが「慧」へと転化することによって、「覚り:精神的向上」への道が開かれる。そのことを八正道として実践することにおいて、人間は宇宙の新たな次元に創発する自律的で精神的な存在となる。このようなブッダの教説は、いかなるドグマにもイデオロギーにも頼ることなしに、人間の実存と向上が可能であることを示す自然主義的ヒューマニズムである。ブッダ本来の思想の現代における復活は、人類の歴史における一つの終わりの、新たな始まりへの還帰を意味するのだ。

【テキスト】
・浅野孝雄『心の発見。複雑系理論に基づく先端的意識理論と仏教教義の共通性』、産業図書、2014.
・フリーマンW『脳はいかにして心を創るのか』、浅野孝雄訳、産業図書、2011.
・ゴンブリッチR『ブッダが考えたこと。プロセスとしての自己と世界』、浅野孝雄訳、サンガ、2018.