(T01) 仏教入門

前田 專學(まえだ せんがく)
(公財)中村元東方研究所理事長 兼 東方学院長

これは仏教について知りたいと思っている方への入門講義です。今から二千数百年前のインドの人々は歴史的・社会的・文化的に大きな変動の中にありました。仏教の開祖ゴータマ・ブッダは、その変動の時代に生まれ、神のような超人間的存在に頼ることなく、人間として如何に生きるべきであるべきかを考え、ただひたすら宇宙の理法(ダルマ)を追究し、それを人々に熱心に説き示し続けました。
本講義は、テキストを使って、そのブッダの生涯と思想についてお話し、出来ればその後の仏教の流れをたどり、仏教への誘いとなればと考えております。

(T02) 比較思想

川﨑 信定(かわさき しんじょう)
筑波大学名誉教授

「思想」に関して「比較」の手法と手続きはなぜ必要とされ、また有効であるのか。東西の思想文化圏において、どの時代においても問題とされている、人間にとっての普遍的問題のいくつかを取り上げ、思想を比較して論ずる意義を分析したい。

(T03) 両界曼荼羅の源流

田中 公明(たなか きみあき)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

平安時代の初頭に最澄・空海らによって伝えられた曼荼羅は、日本における仏教図像の中心となったばかりでなく、その後の日本文化全般にも大きな影響を与えた。講師は、2017年に「両界曼荼羅の仏たち」を講じたが、今回は、インドにおける曼荼羅の成立から説きおこし、曼荼羅の歴史的発展と図像の象徴性を概観する。現在のところ、前期で胎蔵界・金剛界の両界曼荼羅の成立史を取り上げ、後期では曼荼羅の日本的展開、チベット・ネパールに伝えられた後期密教の曼荼羅、曼荼羅の欧米への伝播などの講義を予定している。

(T04) 伸びるアメリカ仏教の現状と原因 —日本仏教への示唆

ケネス・田中(けねす たなか)
武蔵野大学名誉教授

アメリカの仏教徒は、この四十年間で十七倍も増え、350万人となっている。彼らに加え、仏教徒とは断言しないが仏教的行動をとる同調者や仏教に強く影響された人々を含めば、約3,000万人という驚く数になる。授業では、2500年という仏教史の中で始めて「西洋の壁」を超えたこの現状と原因を理解し、最初から「現代」宗教であったアメリカ仏教が、日本仏教が直面している諸問題の解決に示唆を与えるかどうかを検討する。

(T05) 英語で『歎異抄』を読む

ケネス・田中(けねす たなか)
武蔵野大学名誉教授

『歎異抄』は浄土真宗の宗門を超え注目され、幅広い人気を呼ぶ書物である。それが、海外でも同じである。既に数ケ国語に訳されていて、英語でも10冊以上の訳がある。英語を通して読めば、また別の感覚と理解が生まれてくる可能性がある。例えば、「善人なほもって往生をとぐ、いはんや悪人をや。」の英訳は、Even a good person attains birth; how much more so the evil person!このように、英語の方が理解しやすいという人もいる。本講座では、『歎異抄』の前半が対象となります。

(T06) 仏教論理学入門

林 慶仁(はやし けいじん)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

インドで発生・発展した仏教の論理学を初歩より学んでゆきます。仏教論理学は思考の過程が重要であり、結論を急ぐものではありません。内容としては、仏教が規範師であることの証明、輪廻の論証、刹那滅の論証など、仏教の宗教哲学のものですが、これらをいかに考察したかを考えてゆきます。
仏教論理学の大成者ダルマキールティのテキストをサンスクリット語で理解する必要があれば、テキストを読んで参ります。

(T07) 夏目漱石の『心』を読む

今西 順吉(いまにし じゅんきち)
北海道大学・国際仏教学大学院大学名誉教授

漱石の作品は読み始めると筆力に惹かれて一気に最後まで読み進んでしまう魅力があります。
『心(こ﹅ろ、こころ)』は恋愛と友情、裏切りと自殺という切実な問題を描いておりますから、なおさらです。
しかし読み終わって、さて、作者は一体何を言おうとしていたのだろうかと考え始めると、
困惑に陥ります。これまで批評家・研究者達が実に様々な見解を表明してきたのはそのような事情を反映していると言えるでしょう
。実は、漱石の作品は「物語という表層」の作品構造の根底に、漱石自身の「思想」があります。
その思想を把握せずに表層構造のみから理解しようとするために、
多種様々な解釈が「私の描く漱石像」なる「虚像」として生み出されることになります。
丁寧に読み進めることによって漱石の実像に迫ります。

(T08) 現代脳科学と仏教心理学

浅野 孝雄(あさの たかお)
埼玉医科大学名誉教授

日本人は未だ仏教的心情を失っていないとしても、仏教の存在意義を疑問視する人は多い。
しかし、仏教が過去においてこれほどの普遍性を獲得してきた理由は、
ブッダが人間の心の諸現象を明確な自然的事実として把捉し(五蘊)、
それらの関係性(縁起)を洞察して明示したことにある。
したがって、このようなブッダの「心の現象学」が
十分な脳科学的・心理学的根拠を有することを示すことができたならば、
仏教は「神なき宗教」として、現代世界を覆うアノミーの暗闇を照らす光となるであろう。
本講ではこのような構想に基づいて、ブッダの心についての教説が
脳科学および進化心理学に立脚する現代意識理論との鏡像的対応を有することを示していきたい。

(T09) 大乗仏教思想概説

渡辺 章悟(わたなべ しょうご)

東洋大学教授

大乗仏教はどのような仏教を言うのか、それはいつ、どこで起こり、どのように展開したのか。
これをスケッチするのはなかなか大変な作業です。
本講座はインド仏教の背景から説き起こし、その仏教思想の本質を探ります。
具体的なトピックは①経典の成立、②大乗の特徴とその思想、③法滅と授記、
③悟りの智慧の展開、④第二の転法輪、⑤三乗思想、⑥菩薩思想などです。
これらを分析しながら、大乗仏教思想の全体像を描きます。

(T10) ヒンドゥー教の思想と文化

宮本 久義(みやもと ひさよし)
元東洋大学教授

インドは仏教発祥の地として有名ですが、現在のインドでは約8割の人がヒンドゥー教という宗教を信仰しています。本講座では、仏教との相違を念頭に置きつつ、ヒンドゥー教の思想と文化を総合的に解説します。具体的には、ヒンドゥー教の成り立ちから神々の構成と神話の解釈、人々が遵守すべき教義、祖先供養やその他の儀礼などですが、本年度は特にインドの代表的な聖地を取り上げ、その神話(縁起譚)と聖地の構造を解説する予定です。