(T04) インドの思想と文化 ―ラフカディオ・ハーンが理解する―

前田 專學(まえだ せんがく)
(公財)中村元東方研究所理事長 兼 東方学院長

これはインドの思想と文化について興味のある方への入門講座です。昨年度からは拙著『インド思想入門―ヴェーダとウパニシャッド』(春秋社)をテキストにして授業を進めており、終わり次第「インドの思想と文化―ラフカディオ・ハーンが理解する―」について講義をする予定です。ハーンはインドに行ったことはありませんが、意外にも三十点ほどのインドに関係している作品を遺しています。かれの作品や、彼が遺した蔵書からみると、かれのインドに関する関心は強く、その眼差しは温かく、ヒンドゥー教や仏教に関する学殖は正確であり、かなり広くかつ深いものがあります。勿論途中からの参加も歓迎します。

(T05) 千手観音と二十八部衆のすべて

田中 公明(たなか きみあき)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

数多い変化観音の中でも、千手観音はその強大な救済力から、最も信仰を集めた尊格といえる。また千手観音は、密教とともに発展した尊像の多面広臂化の最終的到達点ともいえる。本講義の第一部では、観音信仰の起源から説き起こし、千手観音が現れた歴史的、宗教的背景と、シルクロード地域、中国、日本、チベット、ネパールに遺される千手観音の作例を概観する。さらに第二部では、千手観音の陀羅尼として、主として禅門で読誦される「大悲呪」(大悲心陀羅尼)を中心に、千手観音の陀羅尼を紹介する。さらに第三部では、2018年に大幅な尊名変更と配置換えが行われた京都三十三間堂の二十八部衆像を中心に、千手観音の眷属とされる二十八部衆について見ることにする。

(T06) 伸びるアメリカ仏教の現状と原因 —日本仏教への示唆

ケネス・田中(けねす たなか)
武蔵野大学名誉教授

アメリカの仏教徒は、この四十年間で十七倍も増え、350万人となっている。彼らに加え、仏教徒とは断言しないが仏教的行動をとる同調者や仏教に強く影響された人々を含めば、約3,000万人という驚く数になる。授業では、2500年という仏教史の中で始めて「西洋の壁」を超えたこの現状と原因を理解し、最初から「現代」宗教であったアメリカ仏教が、日本仏教が直面している諸問題の解決に示唆を与えるかどうかを検討する。

(T07) 英語で『歎異抄』を読む

ケネス・田中(けねす たなか)
武蔵野大学名誉教授

『歎異抄』は浄土真宗の宗門を超え注目され、幅広い人気を呼ぶ書物である。それが、海外でも同じである。既に数ケ国語に訳されていて、英語でも10冊以上の訳がある。英語を通して読めば、また別の感覚と理解が生まれてくる可能性がある。例えば、「善人なほもって往生をとぐ、いはんや悪人をや。」の英訳は、Even a good person attains birth; how much more so the evil person!このように、英語の方が理解しやすいという人もいる。本講座では、『歎異抄』の前半が対象となります。

(T08) 陰陽の宇宙論と東アジア

鈴木 一馨(すずき いっけい)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

「陰陽」とは、中国に成立した天の理念や元気論、陰陽説や五行説あるいは易などのさまざまな宇宙論と、それを基礎とした占いや風水・医術などの諸技術の総称です。広く東アジアに共有されるこれらの思想・技術は、道教・仏教をはじめとした東アジアの諸宗教・文化と深く結びついています。本講義は東アジアの宗教・文化を理解する手がかりとして、この陰陽の宇宙論について『五行大義』の講読をしながら講説することにします。

(T09) 仏教論理学入門

林 慶仁(はやし けいじん)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

インドで発生・発展した仏教の論理学を初歩より学んでゆきます。仏教論理学は思考の過程が重要であり、結論を急ぐものではありません。内容としては、仏教が規範師であることの証明、輪廻の論証、刹那滅の論証など、仏教の宗教哲学のものですが、これらをいかに考察したかを考えてゆきます。
仏教論理学の大成者ダルマキールティのテキストをサンスクリット語で理解する必要があれば、テキストを読んで参ります。

(T10) イスラームとヒンドゥー教・仏教の交流

保坂 俊司(ほさか しゅんじ)
中央大学大学院教授

イスラム教の理解は、日本人には難しい部分があります。本講座では、インドにおけるイスラムとヒンドゥー教・仏教との交流を思想的、歴史的に追いつつ、その接点を通じて、イスラム教の特徴について考えます。

(T11) 現代脳科学と仏教心理学

浅野 孝雄(あさの たかお)
埼玉医科大学名誉教授

人間を人間であらしめるのが心である。現代においては、心脳同一説(心とは脳の物理的な働きであるとする考え)や人間機械論が急速に影響力を増しつつある。それに対抗して人間の尊厳を保持するためには、脳と心の関係についての科学的探究を進め、心が物とは異なる次元の実在であることを証明しなければならない。本講義では、「脳はいかにして心を創るのか」という問題を中心に、現代意識理論と仏教心理学の関係を探る。

(T12) ヒンドゥー教の思想と文化

宮本 久義(みやもと ひさよし)
東洋大学大学院客員教授

インドは仏教発祥の地として有名ですが、現在のインドでは約8割の人がヒンドゥー教という宗教を信仰しています。本講座では、仏教との相違を念頭に置きつつ、ヒンドゥー教の思想と文化を総合的に解説したいと思います。具体的には、ヒンドゥー教の成り立ちから神々の構成と神話の解釈、人々が遵守すべき教義、祖先供養などの儀礼、新年祭などの祭礼、聖地への巡礼、さらには美術、音楽、映画なども取り上げる予定です。

(T13) 本覚如来蔵思想から密教へ

津田 眞一(つだ しんいち)
国際仏教学大学院大学名誉教授、Ph.D.(A.N.U.)、文学博士(東京大学)

仏教の思想史は挙げて或る<弁証法>的定式の目的論的提示としてある。この定式は、それが西田の所謂「絶対者の自己表現の形式」であるが故に、キリスト教神学の上にも開放される。現に巨大なバルト神学は、その後半(『教会教義学』の段階)において、この<弁証法>的事態の、但し、隠蔽としてあるのである。本講は今年度、その事態の仏教における表明である如来蔵思想に立ち戻り、その思想的本質とそれが負っている制約とを解明する。