(T04) インド仏教史

佐古 年穂(さこ としお)
駿河台大学大学院教授

釈尊が生まれ、仏教を育んだインド。そのインドにおける仏教の展開を概観します。仏教以前、釈尊の教え、アビダルマ仏教、大乗仏教、密教と、それぞれの思想内容、変化の理由などを考えていきます。仏教は難しいとよく言われますが、受講する皆さんの疑問にも可能な限り答えていくことで、初心者にとっての分かりやすい仏教入門となることを願っています。なお、特定のテキストを読んでいくことはありません。

(T05) 両界曼荼羅の源流

田中 公明(たなか きみあき)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

平安時代の初頭に最澄・空海らによって伝えられた曼荼羅は、日本における仏教図像の中心となったばかりでなく、その後の日本文化全般にも大きな影響を与えた。講師は、2017年に「両界曼荼羅の仏たち」を講じたが、今回は、インドにおける曼荼羅の成立から説きおこし、曼荼羅の歴史的発展と図像の象徴性を概観する。現在のところ、前期で胎蔵界・金剛界の両界曼荼羅の成立史を取り上げ、後期では曼荼羅の日本的展開、チベット・ネパールに伝えられた後期密教の曼荼羅、曼荼羅の欧米への伝播などの講義を予定している。

(T06) 伸びるアメリカ仏教の現状と原因 —日本仏教への示唆

ケネス・田中(けねす たなか)
武蔵野大学名誉教授

アメリカの仏教徒は、この四十年間で十七倍も増え、350万人となっている。彼らに加え、仏教徒とは断言しないが仏教的行動をとる同調者や仏教に強く影響された人々を含めば、約3,000万人という驚く数になる。授業では、2500年という仏教史の中で始めて「西洋の壁」を超えたこの現状と原因を理解し、最初から「現代」宗教であったアメリカ仏教が、日本仏教が直面している諸問題の解決に示唆を与えるかどうかを検討する。

(T07) 英語で『歎異抄』を読む

ケネス・田中(けねす たなか)
武蔵野大学名誉教授

『歎異抄』は浄土真宗の宗門を超え注目され、幅広い人気を呼ぶ書物である。それが、海外でも同じである。既に数ケ国語に訳されていて、英語でも10冊以上の訳がある。英語を通して読めば、また別の感覚と理解が生まれてくる可能性がある。例えば、「善人なほもって往生をとぐ、いはんや悪人をや。」の英訳は、Even a good person attains birth; how much more so the evil person!このように、英語の方が理解しやすいという人もいる。本講座では、『歎異抄』の前半が対象となります。

(T08) 仏教論理学入門

林 慶仁(はやし けいじん)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

インドで発生・発展した仏教の論理学を初歩より学んでゆきます。仏教論理学は思考の過程が重要であり、結論を急ぐものではありません。内容としては、仏教が規範師であることの証明、輪廻の論証、刹那滅の論証など、仏教の宗教哲学のものですが、これらをいかに考察したかを考えてゆきます。
仏教論理学の大成者ダルマキールティのテキストをサンスクリット語で理解する必要があれば、テキストを読んで参ります。

(T09) 夏目漱石『こころ』を読む

今西 順吉(いまにし じゅんきち)
北海道大学・国際仏教学大学院大学名誉教授

『こころ』は日本人なら誰もが知っていますが、この作品に対する解釈・評価は実に様々で、同一の作品に対する解釈・評価とは信じられないほどです。その原因は、深く共感して読み進むうちに、いつしか読者は自分の「内なる観念」を作品の中に読み込んでしまうことにあります。こうして『こころ』は読者の「私の『こころ』」になってしまうのです。しかし言うまでもなく『こころ』は漱石の作品です。その根幹には漱石の思想があります。思想を文学的構想力によって表現したものが漱石作品です。漱石の思想を把握しなければ『こころ』を理解することはできません。テキストに即して詳細に検討します。

(T10) 現代脳科学と仏教心理学

浅野 孝雄(あさの たかお)
埼玉医科大学名誉教授

過去10万年の間に人類の知能は双曲線的な発達を遂げ、それは現代において既に分岐点に到達している。大部分の人間がこの発達から取り残されていることによって、社会の格差が深刻化している。この問題に対して、科学あるいは仏教は、いかなる答えを示すことができるのだろうか。古代的世界観の復活は、おそらくは階級分裂を助長するだけであるから、脳と心の同一性に立脚する包括的一元論の確立を目指すことこそ、現代仏教が目指すべき道であると考えられる。

(T11) ヒンドゥー教の思想と文化

宮本 久義(みやもと ひさよし)
元東洋大学教授

インドは仏教発祥の地として有名ですが、現在のインドでは約8割の人がヒンドゥー教という宗教を信仰しています。本講座では、仏教との相違を念頭に置きつつ、ヒンドゥー教の思想と文化を総合的に解説します。具体的には、ヒンドゥー教の成り立ちから神々の構成と神話の解釈、人々が遵守すべき教義、祖先供養やその他の儀礼などですが、本年度は特にインドの代表的な聖地を取り上げ、その神話(縁起譚)と聖地の構造を解説する予定です。

(T12) 本覚・如来蔵思想から密教へ

津田 眞一(つだ しんいち)
国際仏教学大学院大学名誉教授、Ph.D.(A.N.U.)、文学博士(東京大学)

仏教の思想史は挙げて或る<弁証法>的定式の目的論的提示としてある。この定式は、それが西田の所謂「絶対者の自己表現の形式」であるが故に、キリスト教神学の上にも開放される。現に巨大なバルト神学は、その後半(『教会教義学』の段階)において、この<弁証法>的事態の、但し、隠蔽としてあるのである。本講は今年度、その事態の仏教における表明である如来蔵思想に立ち戻り、その思想的本質とそれが負っている制約とを解明する。

(T13) 東南アジアの宗教・歴史・文化

奈良 修一(なら しゅういち)
(公財)中村元東方研究所専任研究員

東南アジアと言われる地域は、中国文明とインド文明の狭間にあり、交易を中心とする国家を成立してきた歴史があります。また、その土地の文化の上にインド宗教文化などを受容し、それをその土地のものとして変容してきました。日本との関わりも深いこの地域ではありますが、その宗教・歴史・文化はあまり知られていません。本講義では、この地域の歴史を概観すると共に、受容してきた文化も考察していきます。